社会人になってから英会話の勉強を始めようとしたとき、どんな英会話教材を使って勉強するのが一番効率がいいか悩むところだろう。
なにせ、書店の英語コーナーに行くと、大量の英語教材が並べられているし、雑誌やテレビCMでも、いとも簡単に「英語ペラペラ」になれるという宣伝文句の英会話教材が山ほどあるからだ。
私自身、英語の勉強を始めたときには、どの教材がいいのか分からずに、次から次へと購入しては、効果を実感できずにすぐに止めて本棚に並べておくということを何度も繰り返した。
参考までに、そのとき、どうやって教材を選んでいたかというと
- 雑誌の広告に載っている英会話教材を試す。
- 書店の英語教材コーナーに行って、それっぽい教材を適当に選ぶ。
というくらいなものだった。当然、そんなふうにいい加減に選んだ教材というのは、自分の学習レベルに合っていなかったり、自分に必要な内容を学べなかったり、教材自体がダメ教材だったりして、あまり効果の出ないものばかりであった。
今なら、ネットで英会話教材のランキングサイトやレビューサイトがあるので、そういうサイトを参考にできるが、そういうサイトを参考にしても、やはり本当に効果の出る教材、自分のレベルに合った教材を選ぶのはかなり難しいということに変わりはない。
特に、報酬目当てのアフィリエイターがダメ教材を熱心におすすめしていることがあるので油断がならない。
そこでこの記事では、これから英会話の勉強を始めて、できるだけ短期間に無駄なく英会話を身に付けたいという人のために、英語の学習レベルに合わせて必要な教材を紹介する。
■ 段階別のおすすめ英会話教材
初心者が英会話の勉強を始めるときに、おすすめの教材は、以下の4種類の教材である。
- 分かりやすい文法参考書
- 瞬間英作文の教材
- 音の変化を学べるリスニング教材
- リスニング練習用のオーディオ教材
これから、それぞれの教材について詳しく説明する。
▼ 分かりやすい文法参考書
「英会話を勉強するのに、文法を勉強する必要はない」という意見もある。
ネイティブの子供や、親の海外赴任で海外で育った子供は、文法を勉強しなくても英語ペラペラになることがその根拠らしい。
しかし、脳が柔軟な小さな子供とは違って、大人になってしまうと脳の柔軟度が衰えてくるため、子供と同じように英語を習得することはできない。
大人になってしまうと、日本語での思考回路が脳にしっかりと作り込まれてしまうため、その日本語回路に英語という新しい言語をインストールしようと思っても、期待通りの結果を得ることができないのだ。
そこで、大人になってから英語を身に付けるために、日本語回路とは別に新しい英語回路を組み込むことが必要になる。
そして、そのためには、文法というツールを使うことが大幅な効率アップにつながるのだ。
しかし、文法と言うと、受験英語を思い出して拒否反応を示す人が多いのも事実だ。
受験英語では、細かい文法ルールや前置詞の使い分けなどを覚え込ませられ、ちょっとでも間違えると減点されるという不愉快な経験を味わうことになるからだ。
しかし、英会話で必要な文法は、受験英語のように細かくて難しいものではない。
主に
「単語をどのような順序で並べればいいか」
ということを覚えたら完了だ。集中して勉強すれば、1週間ほどあれば十分に終わらせられる内容である。
しかも、簡単な会話ができればいいのであれば、第1文型から第5文型という5つのパターンを覚えたら十分なくらいである。
だから、初心者が英会話を最短で身に付けるためには、最初に文法の参考書を手に入れていただきたい。
難しい参考書を買う必要はない。書店の英語コーナーに行って、中学レベルの英文法を一番分かりやすく説明している本を選べばいい。
そして、単語を並べる順序などを一通り勉強したら次の段階に進もう。
▼ 瞬間英作文の教材
文法をだいたい勉強したら、次は瞬間英作文の教材を手に入れていただきたい。
瞬間英作文というのは、日本語文を見て、それを英文に訳して声に出して言う練習のことである。
試験の和文英訳のように時間をかけてゆっくりと訳し、英文を紙に書くのではなく、教材に載っている日本語文を見て、すぐに英語で声に出して言う練習を繰り返すのだ。
この練習をすることで、今まで頭で理屈を理解していただけだった文法を体で覚えることができるようになる。
自動車の運転に例えるなら、それまでは運転方法を教科書で学んだだけだったのを実際に自動車を運転して体で覚えるようなものだ。
この瞬間英作文をしっかり練習することで、英会話の上達スピードが格段に速くなるので、絶対に抜かしてはいけない。
しかし、英会話を身に付けたいと考えて英語を熱心に勉強する人は多いが、この瞬間英作文を練習する人はあまり多くはない。
ほとんどの人は、基礎文法を勉強したら英語オーディオを聞くだけの勉強法に変えたり、英会話スクールなどでネイティブとの会話を練習したりする。
だが、誰もが経験するように、オーディオを聞いていても英会話ができるようにはならない。
また、英会話スクールに行っても英語を話せるようになる人は、ごく一握りに過ぎない。
なぜなら、文法を知っていても、自分の頭で英文を作る練習をしていなければ、ネイティブと会話をしようとしたときに、言葉がぜんぜん出てこないので沈黙の時間が続くだけだからだ。
つまり、英会話を練習したくて英会話学校に行っても、英語を練習することができないという矛盾が発生する。
だから、英会話教室などでネイティブと英会話をする前の段階として、瞬間英作文の教材を使って、瞬間的に英語で文章を組み立てられるように練習することが大切なのだ。
繰り返すが、瞬間英作文をしっかり練習することで、その後の英会話をマスターするスピードが格段に速くなる。
▼ 音の変化を学べるリスニング教材
英会話では、話すスキルと聞くスキルの両方が求められる。
だから、当然だがリスニングを練習して相手の言うことを理解できるようにならなければ、会話のキャッチボールは成立しない。
そこでリスニングの練習教材が必要になるわけだが、英文を読み上げるだけの一般的なリスニング教材では、リスニング力はすぐに伸びなくなってしまう。
「英語教材の英語は聞き取れるのに、ネイティブが自然に話す英語は聞き取れない」という状態になってしまうのだ。
その理由は、英語の音の変化を学んでいないことにある。
英語の音の変化というのは、たとえば
「 Did you 」
は、ゆっくりと発音すれば
「ディッド ユー」
だが、ネイティブの会話では
「 ディジャ」
のように短く発音される。また、
「 give me(ギヴ ミー)」
が
「ギミ」
のように発音されたりする。
こういった音の変化を知らずに、ひたすら英語オーディオを聞き続けても、音の変化のために聞き取れない箇所がたくさんあるのであまり上達しない。
だから、最初に音の変化をしっかりと学んでおくのが、リスニング上達の近道になるのだ。
こういった音の変化を学ぶには、専用の教材を使うのが効率的だ。一般的なリスニング教材と比べると数は少ないが、書店やネットで購入することができる。
▼ リスニング練習用のオーディオ教材
音の変化を学んだら、次は一般的なリスニング教材で勉強しよう。
一般的なリスニング教材を使う目的は、以下のとおりだ。
- 英語を耳になじませる。
- 英単語を英語のまま理解する能力を鍛える。
- 長い文でも理解できるように鍛える。
以下に、上記の1から3について説明する。
英語を耳になじませる。
目で見て覚えただけの言葉は、耳で聞いたときに理解することができない。だから、必ずオーディオ教材を聞いて、英語を耳になじませる必要がある。
練習方法としては、ディクテーションという方法が効果がある。
ディクテーションというのは、英語のオーディオを聞いて、聞いた英文をノートなどに書き出すことだ。
1文ずつオーディオを停止してもいいので、聞こえた英文をすべて書き出し、聞き取れなかった部分は片仮名で書いておけばいいだろう。
そして何度も同じオーディオを聞いて、とにかく聞き取れる部分はすべて書き出してしまい、その後で初めて英文スクリプトを見て確認する。
そしてまた、繰り返しオーディオを聞く練習を繰り返すのだ。
英文を書き出すのは手間なので、面倒くさがってやりたがらない人が多いが、リスニング力アップに効果絶大なので、ぜひとも実践していただきたい。
ディクテーションで使うリスニング教材は、7割くらい聞き取れる教材なら何でもいい。
たとえば、NHK英会話でもかまわないので、自分のレベルに合ったものを選ぼう。
英単語を英語のまま理解する能力を鍛える。
ネイティブの英語を聞き取れるようになるには、英語を日本語に訳すことなく、英語のまま理解できることが絶対条件だ。
耳から入ってきた英語を日本語に訳していたのでは、英語のスピードについていけない。
そこで、英語のまま理解できるように練習することが大切になってくる。
練習方法としては、オーディオを聞いていて、たとえば
「 article(記事)」
という単語が英文に含まれていたなら、雑誌の記事をイメージとして思い浮かべることだ。
こうして英単語とそのイメージを頭の中で関連づけることで、英語を聞いたときに日本語に訳さなくても意味が分かるようになってくる。
「 carry(運ぶ)」のような動詞の場合は、名詞をイメージするより難しいが
「She is carrying a suitcase(彼女はスーツケースを運んでいる)」
など、英文の場面を思い描くとよいだろう。
この練習は、先ほどのディクテーションの練習と同時にするといい。
長い文でも理解できるように鍛える。
短い英文なら聞き取れるが、長い英文が聞き取れなかったり、次々と話されて話が長くなると聞き取れなかったりすることがある。
このような状態を克服するには、「多聴」と呼ばれる練習をすることだ。
多聴というのは、英語のオーディを流しっぱなしにして聞き続けることだ。ディクテーションのときのように途中で止めたりせず、聞き取れない部分があっても最後まで聞き続ける。
そして、全体的な話の内容を理解する練習をするのだ。
聞き取れない部分があれば、その前後から想像すればよい。だから、細かいことにはこだわらずに、とにかく英語オーディオを最後まで聞いて、話の内容をとらえる練習をする。
この練習をすることで、ネイティブスピーカーが「ダダダダダダ・・・」という感じで話し続けても、ひるむことなく理解できるようになる。
多聴に使うリスニング教材は、NHK講座のような短いものではなく、もっと長い教材がよいだろう。
市販されているリスニング教材で7割くらい聞き取れるものを買ってもいいし、インターネットで無料で提供されている英語オーディオを使ってもいい。
たとえば、Loyal Booksというサイトでは、著作権が切れた書籍をオーディオ化して無料で配布している。
初心者には少し難しいが、少し自信が付いてきたら、こういった無料オーディオを使うのもいいだろう。
■ まとめ
ここまで説明してきたように、英会話力を伸ばすために必要な教材は、以下の4種類だ。
- 分かりやすい文法参考書
- 瞬間英作文の教材
- 音の変化を学べるリスニング教材
- リスニング練習用のオーディオ教材
とりあえずテレビや雑誌で見た英会話教材を試してみても、ほぼ100パーセント失敗することになる。
だから、失敗を避けるために上記の4種類の中から教材を選んでいただきたい。
そうすれば、英会話の基盤となる能力をしっかりと築き上げることができる。
なお、具体的な教材名を教えてほしいという相談をいただくことがあるが、人それぞれ英語力が違うので、個人個人の英語力を知ることなく英語教材をおすすめすることはできないことをご理解いただきたい。