短期間に22 か国語を身につけるなんて、本当に可能だとあなたは信じられるだろうか?
英語の勉強だけでも苦労しているのに、22か国語なんて想像もできないはずだ。
でも、みんなが知っているあの人は、本当に22か国語を短期間にマスターしてしまったのである。
その人物の名前は、ハインリッヒ・シュリーマンである。
シュリーマンは、中学生のときに歴史の教科書に出てきた人なので、覚えている人も多いのではないだろうか。
彼は、ギリシャ神話に出てくる伝説の都市トロイアが実在することを発掘によって証明した人物だ。
22か国語を身につけた男というのは彼のことだ。
実際には、シュリーマンが使いこなせた言語の数は 18 か国語とも言われていて、本当のところは誰にも分からない。
女性の前で格好をつけようと思って、少し多めに言った可能性もあるということだ。
しかし、22か国語だろうと 18かカ国語だろうと大きな違いはない。
どちらにしても、一般人の常識をはるかに越えた数字だからだ。
このページでは、このシュリーマンが言語を身に付けた勉強法について説明する。
■シュリーマンの言語勉強法の特徴
シュリーマンの語学の勉強法には、以下のような特徴がある。
- 非常に多く音読する。しかし、決して翻訳しない。
- 毎日1時間を勉強に使う。
- 常に興味ある対象について、学んでいる言語で作文する。
- 書いた作文を教師の指導によって訂正する。
- 訂正してもらった作文を暗記して、次のレッスンのときに暗誦する。
- 日曜日には教会に行って外国語の説教を聞き、その一語一語を低く口まねする。
この方法で勉強していると、しだいに記憶力が強化されてきて、短期間に外国語を身につけられるようになったそうだ。
シュリーマンの勉強法は、私達日本人の英語の勉強にも応用できるので、彼の勉強法についてもっと詳しく説明する。
1)非常に多く音読する。しかし、決して翻訳しない。
音読の練習は、外国語を勉強するときには必須の練習法だ。
もちろん、TOEICのようなペーパーテストで点数を取ることが目的で勉強しているなら、音読の練習は必要ないが、外国語を話せるようになりたいなら、音読の練習がとても効果的だ。
音読の練習をたっぷりすることで、文字を目で見るだけの勉強法より何倍もしっかりと英語が記憶に定着する。
しかも、口や舌を動かすので、実際に英語を話すときに流ちょうに話せるようになる。
なぜなら、英語には日本語に存在しない発音がたくさんあるため、日本語には存在しない英語だけの口や舌の動きがたくさんある。
こういった英語独特の口・舌の動きは、普段から練習しておかないと、いざというときに役に立たない。
こうして音読をするときは、学校で習うような文法に従って翻訳しながら読んではいけない。
日本語と英語は文法が違うため、文法どおりに翻訳しながら読むと、英語を後ろから前に戻りながら理解することになる。
後ろから前に戻りながら理解していたのでは、読むのに時間がかかりすぎるし、誰かと会話するときに、相手の言ったことを理解するのが困難になってしまう。
だから、会話をするときだけでなく英文を読むときも、文法に沿って翻訳するのではなく、文の先頭から順に、英語のまま理解するように練習をしておくことで、会話のときに相手の言ったことをスッと理解できるようになる。
音読の練習をするときのコツは、英単語や英文の内容をイメージしながら読むことである。
たとえば、
I bought this watch at a discount.
(私はこの時計を割り引き価格で買った)
という英文を読むときには、実際に割引価格で買った時計を友達に見せている場面を想像しながら音読をするということだ。
まるでお経を唱えるように、何も考えずに英文を音読ただけでは、いくら英語を音読しても効果はない。
自分が誰かと話している場面を想像しながら、英文を音読することで効果があるのだ。
2)毎日1時間は勉強する。
「1日30分の勉強で英語ペラペラになれる」
とか
「英語は勉強するな」
とか
「聞き流すだけで英語が口から飛び出した」
というような宣伝文句をあちこちでよく見かける。
しかし、そのような宣伝文句すべて、苦労せずに英語を身につけたい人の注目を集めるために、コピーライターが頭をひねって考えたキャッチフレーズだ。
手品師が手品をするときに、「種も仕掛けもありません」というのと同じで、決して信じてはいけない。
シュリーマンは 1 日 1 時間を勉強に使うと言っているが、私の意見では1時間では少ない。
おそらくシュリーマンは非常に優れた頭脳の持ち主だったと考えられるが、我々のほとんどは平均的な頭脳しか持ち合わせていないからだ。
だから、「私は天才だ」という自信のある方以外は、1日2 時間くらいは勉強したほうがいいだろう。
1日2時間の勉強というと大変そうに思えるが、そんなことはない。
2時間とは言っても、2時間みっちりと机に向かっていなければいけないわけではなく、通勤時間にリスニング教材を聞いたりすることも、この時間に入れてもいいので、実際に机に向かって勉強する時間はもっと短くなる。
できるだけ効率よく無駄なく勉強するためには、通勤時間やトイレの時間でも勉強できるように、スマートフォンやiPodなどで英語教材を持ち歩くことをおすすめする。
3)常に興味ある対象について作文を書く。
我々日本人が、中学と高校で合計6年間も英語を勉強しているのにまったく英語を話せない理由の1つは、英語をインプット(覚えること)ばかりに時間を使って、アウトプット(話したり書いたりすること)をぜんぜんしないからだ。
勉強のために使う問題集も問題ありだ。
問題集によく載っている穴埋め問題などを解く練習をいくらしても英語は上達しない。
問題集には英作文問題も載っているが、穴埋め問題などに比べると数が極端に少ない。
だから、学校の勉強では、話したり書いたりというアウトプットがまったく足りない。
英語教材から学んだこと(インプットしたこと)は、頭から取り出す練習(アウトプット)の練習をしなければ、英会話は英作文のときに使えるようにはならない。
英語を自由に話せるようになるには、必ずアウトプットの練習をする必要がある。
アウトプットには、「話すこと」と「書くこと」があるが、一人でできるアウトプットの練習としては書くことがお手軽だ。
書く内容は、あなたの興味のあることであれば何でもかまわないが、外国人と話をするときには、最初に自己紹介をして、それから家族や仕事の話をするのではないだろうか。
さらに、趣味の話もするはずだ。
それなら、これらの話題について英語で作文(アウトプット)しておくと、実際に英語で会話するときにスッと出てくるようになる。
4)作文を教師の指導によって訂正する。
(3)で作文をするが、あなたが書いた英文には間違いがたくさんあるはずだ。
文法の間違いがあったり、ネイティブならそんな表現はしない、というような不自然な表現などだ。
さらに、英語でどう表現すればいいか分からなかった箇所もあるはずである。
そのような箇所をネイティブの先生に訂正してもらおう。
ネイティブに訂正してもらうことで、言いたいことを正しく表現する方法を知ることができる。
そのためには、英会話スクールなどで講師に頼めば直してもらえるし、英作文指導を専門に提供しているスクールもある。
インターネットで「英文 添削」などと検索すれば簡単に見つかる。
5)直してもらった文を暗記して、次の時間に暗誦する。
(4)でネイティブに訂正してもらった英文は、そのままほったらかしにしていては意味がない。
正しい英文を何度も何度も音読して、完璧に覚えてしまおう。
覚えるとは言っても、棒読みで練習して「棒暗記」しても使える英語は身に付かない。
誰かと英語で話している場面をイメージしながら音読することが大切だ。
さらに、家族や友達などに聞いてもらったり、ジェスチャーを使って体を使って練習すると、さらに記憶に残りやすくなる。
ここまでをしっかり練習すれば、自分の興味のあることについて英語で話ができるようになる。
もう一度繰り返すが、受験勉強のときのような「棒暗記」は時間のムダになるだけだ。
6)日曜日には教会に行って外国語の説教を聞き、その一語一語を低く口まねする。
これは「シャドーイング」と呼ばれる練習方法だ。
現在でも、いろいろな英語教材でも勧められているし、通訳者になるための練習方法としても有名だ。
これは、耳から聞こえてきた英文を少し遅れて声に出して追いかけるように繰り返す練習法だ。
シュリーマンが生きていた時代には、教会にでも行かなければ外国語を聞くことができなかったのだろう。
しかし、今はリスニング教材と携帯型オーディオプレイヤーがあるので、いつでもどこでもシャドーイングを練習できる。
シャドーイングの練習をすると、リスニングの練習と英語を話す練習を同時にできる。
これによって、英語のリズムを覚えられるし、自然と英文を覚えるので英語力が大幅に向上することができる。
だから、リスニング教材を聞くときは、聞くだけではなく、必ずシャドーイングするようにしよう。
■ 「シュリーマンの勉強法で英語ペラペラになろう」のまとめ
シュリーマンの勉強法は、現代も英語を真剣に勉強する人が使っている王道とも言える勉強法だ。
確かに、テレビや雑誌では、聞き流すだけで楽に英語が身につくような教材が宣伝されている。
しかし、宣伝に振り回されないで、シュリーマンの勉強法を続けるほうが、結局は短期間に英語を身につけることができる。
シュリーマンの勉強法は、とても効果のある着実な方法なので、ぜひ実践していただきたい。
画像参照元:ウィキペディア