リスニングというのは、英語学習者の誰もが必ずつまずく難関ポイントの1つではないだろうか。
実際、ブログやメルマガを書いていると、「TOEICのリスニングが苦手」だとか「洋画がぜんぜん聞き取れない」という相談のメールをよくいただく。
しかも、勉強していないというのではなく、英語オーディオを使ってかなり練習しているのに、それでも上達しないのだから困ったものだ。
そこでここでは、
- 必ず失敗するリスニングの練習法
- 練習してもリスニングが上達しない理由
- TOEICなんか楽勝になるリスニングの勉強法
について説明する。
■必ず失敗するリスニングの勉強法
おそらく、この方法でリスニング練習をしている人は、かなりの人数にのぼるに違いない。
しかし、この方法でリスニングを勉強しても、ほぼ100%必ず失敗する。つまり、いくら時間をかけても一向に上達せず、自分には才能がないのかなあと悩むことになるのだ。
その失敗勉強法というのは、「聞き流し勉強」だ。
有名な英語教材の宣伝で、聞き流していたら話せるようになったとか、他のことをやりながらラジオを聞いていたら、ネイティブの英語を自由自在に聞き取れるようになったなどということを言っている。
それを信じて、聞き流し勉強をしていると痛い目を見ることになる。
たとえ1日5時間以上、毎日毎日、何か月も聞き流しをしても、ネイティブの英語は聞こえるようにならないからだ。
英語教材の広告で感想を言っている人は、いとも簡単にネイティブの英語がすらすら聞こえるようになったのに、自分はいくら頑張ってもぜんぜん上達している様子がない。
私はバカなのだろうか・・・
などと悩むことになるだろう。
しかし、そんなことで悩んではいけない。
なぜなら、聞き流し系の英語教材では、誰も英語を聞き取れるようにならないからだ。
聞き流し系の教材で英語を聞き取れるようになったと言っているのは、聞き流し系教材の広告に出てくる人たちだけだ。
上達しないのは、あなただけではないので安心してほしい。
聞き流し教材は、楽をして英語を身に付けたいという英語学習者の弱い心を利用する弱者ビジネスのようなものだ。
絶対に信じてはいけない。
■ 練習してもリスニングが上達しない理由
では、聞き流しではなく、集中してリスニングを練習すると上達するかというと、なかなかそううまくはいかない。
集中して練習してもリスニングは上達しないのだ。
どうして上達しないのか?それには以下のような理由がある。
- 単語力が不足しているから
- 英語のスピードに理解が追いつかないから
- 会話のときは、教科書とは違う言い方をしているから
- 単語の音が変化しているから
では、1つずつ説明しよう。
▼単語力が不足しているから
「知らない単語は聞こえない」というのは英語学習者なら身に覚えのあることだろう。
知っている単語なら聞き取れる。しかし、いくらリスニング教材を繰り返し聞いて練習していても、知らない単語は聞き取れないのだ。
しかも、ネイティブなら常識的に知っている単語で、日本人の学習者は知らない単語は膨大な量がある。
試しに、文部科学省のウェブサイトを見ると、中学生が勉強する単語は1500語から1600語程度と書かれている。高校生の場合は3000語程度と書かれている。
一方、平均的なネイティブの語彙力はどうかというと、13歳でも1,9453語、30歳なら2,7808語もあるのだ。
画像の参照元:Test your vocab: the blog
これだけの語彙力を持つネイティブが、日本人が知っているたった3000語だけを使って話してくれるかというと、そんなことはありえないだろう。
必ず私達が聞いたこともない単語があちこちに登場することになる。
そして、初めて聞く単語というのは聞き取れないのだ。
▼英語のスピードに理解が追いつかないから
リスニング教材の英語は、ネイティブがわざとゆっくり話してくれているが、ネイティブどおして会話をするときのスピードは、日本人にはついて行きがたいものがある。
理解しようとして考えているうちに、話はどんどん進んでしまい、あっという間に何一つ理解できなくなってしまう。
どうしてそんなことになるのか?
それは、英語を理解するのに時間がかかりすぎているからだ。
単語を例にとって説明しよう。
ネイティブが「 response 」という単語を会話で使ったとする。
これを聞いて、「レスポンスって何だっけかなあ・・・」と考えて「あっ、返答っていう意味だ」と思い出していたのでは、当然ながら会話にはついて行けない。
考えているうちに、会話はどんどん進行するからだ。
それでは、「 response 」という単語を聞いたときに、すぐに「返答」という意味を思い出せたとする。
これなら会話について行けるだろうか?
残念ながら、これでも英語での会話にはついて行けない。なぜなら、「返答」という日本語に訳してから理解するのに時間がかかるからだ。
ネイティブが自然なスピードで話す英語をすいすい理解するには、「 response 」という単語を聞いたときに、日本語に訳すことなく、その意味を理解できなければいけない。
つまり、
「 response 」→「返答」→理解!
というような間に日本語を挟む3ステップではなく
「 response 」→理解!
という2ステップでなければいけないのだ。
このように英語を聞いたとたんに、その意味を理解できるようになって初めて、ネイティブとの会話を理解できるようになる。
▼ 会話のときは、教科書とは違う言い方をしているから
英語には、文章で書くときと、会話で使うときとでは違う言葉というのが多数存在する。
たとえば、文章で書くときには
「 going to 」
と書くが、会話で使うときには、
「 gonna 」
のように発音したり、
「 want to 」
を
「 wanna 」
と発音したりする。
このように、文語と口語が違う言葉がたくさんあり、特に友達どおしなどの砕けた会話では多用される。
こうした言葉は、教科書を読んで勉強していたのでは身に付けることができないため、ネイティブ英語の洗礼を初めて受けたときに、ぜんぜん聞き取ることができない。
▼ 単語の音が変化しているから
日本語という言語は、単語と単語がつながって別の音になることはほとんどない。
「明日は」と言うときに、「あした」と「は」がくっついて、「あしちゃ」と発音するなんてことは絶対にない。
しかし、英語ではこれに似たことがそこら中で発生する。
たとえば、「 good job 」は「グッド ジョブ」とは発音されず、「グッジョブ」のように発音される。
「 d 」の音は消えてなくなってしまうのだ。
「 about you 」でも同じことだ。「アバウト ユー」とは発音せずに、「アバウチュ」のように発音する。
このように、英語の単語は、単独で発音するときと、文の中で発音するときとでは、音がぜんぜん違うものになってしまう。
だから、このような音の変化を知らなければ、英語は聞き取ることができないのだ。
■ TOEICなんか楽勝になるリスニングの勉強法
ここまで、リスニングが上達しない理由についてお話してきた。
ここからは、どうすればリスニングが上達するか、その勉強法について説明する。
先ほど、リスニングが上達しない理由は、以下の4つであることを述べた。
- 単語力が不足しているから
- 英語のスピードに理解が追いつかないから
- 会話のときは、教科書とは違う言い方をしているから
- 単語の音が変化しているから
ということは、この4つを克服すれば、リスニングはモリモリと上達するということになる。
そこで以下に、それぞれを克服してネイティブ英語の聞き取りができるようになる勉強法をお話しする。
▼ 「単語力が不足しているから」への対策
これを克服するのは簡単で難しい。
なぜ簡単かというと、語彙力を伸ばせばいいだけだからだ。
なぜ難しいかというと、ネイティブの語彙力に追いつくのは、我々日本人にとっては至難の業だからだ。かなりの時間がかかる。
そこで、最初は英会話でよく使われる単語を中心に覚えて、難しい単語は後回しにしてしまおう。
最初の目標は、TOEIC 500点レベルの単語力を身に付けることだ。
TOEIC 500点レベルの単語参考書なら、日常会話でよく使う単語だけをムダなく学ぶことができる。
単語力を鍛えるときに必ず気を付けなければいけないことは、以下の2点だ。
- 単語だけでなく、単語を含む英文ごと覚える
- 必ずオーディオ教材を使って覚える
なぜなら、単語だけ覚えても使い方を覚えなければ、英会話のときに使うことができないからだ。だから、単語を含む文ごと覚えてしまうことで、単語の使い方を身に付けてしまうことが大切なのだ。
単語を覚えるだけでも大変なのに、英文を覚えるなんてとんでもない、と思うかもしれないが、そんなことはない。
人間の脳というのは、単語だけ覚えるような棒暗記より、ストーリーのある文ごと覚えるほうが得意なのだ。
次に、オーディオを使わなければいけない理由は、説明するまでもないだろう。
単語の発音を耳で覚えなければ、リスニング力が伸びるわけがないからだ。
▼「英語のスピードに理解が追いつかないから」への対策
英語を日本語に訳してから理解するのではなく、英語を聞いたとたんに理解できるようになるためには、ちょっとした練習が必要になる。
といっても難しいことではない。想像力を少し使うだけだ。
たとえば、
「 patient(患者) 」
という単語を覚えようとするとき、「 patient、患者、patient、患者、patient、患者、patient、患者、patient、患者、」と、お経のように繰り返し唱えてみても、すぐに忘れてしまううえに、日本語に訳してからでなければ理解できなくなってしまう。
イメージするだけでこんなに違う
では、どうすれば「 patient 」という単語を聞いたとたんに、日本語に訳さずに理解できるようになるかというと、「 patient 」という単語を覚えながら、病院の患者さんの姿を想像することだ。
「 patient 」という単語を覚えながら患者さんの姿を頭の中でイメージしておくことで、「 patient 」という単語を耳から聞いたときに、すぐに患者の姿が思い浮かぶようになってくる。
こうなると、日本語に訳さずに、英語のままで理解できるので、英語を聞いたとたんに理解できるようになる。
この勉強法は、幼児英会話や子供英会話では常識的に使っている。
幼児や子供の英会話教室では、イラストが描かれたカードや本を子供に見せて、それを英語でどう言うかを教え込む。
こうすることで、英語とイメージを頭の中で結びつけることができるので、英語を英語のまま理解できるようになる。
英英辞典を使うと英語を英語のまま理解できるようになる
日本語を挟まずに英語を理解して、ネイティブ英語を聞き取れるようになるもう一つのリスニング勉強法は、英英辞典を使うということだ。
英英辞典を使えば、単語の日本語訳ではなく、単語の意味が英語で説明されている。
だから、日本語を間に挟まずに、英語を英語のままで理解できるようになる。
たとえば、英英辞典で
「comprehensive」
という単語の意味を調べると、
including many, most, or all things
(多くのもの、ほとんどのもの、またはすべてのものを含むこと)
と書かれている。
Merriam-Webster Learner’s Dictionary
「 comprehensive 」に対応する日本語は「包括的」だが、英英辞典で意味を調べたら日本語に訳さずに英語のままで意味を理解できるようになる。
つまり、日本語を挟まない分、英語を理解するスピードが速くなるため、ネイティブ英語のスピードについて行けるようになるということだ。
▼ 「会話のときは、教科書とは違う言い方をしているから」への対策
これを克服するのは簡単だ。
会話では「 want to 」を「 wanna 」と発音するなど、英語には文章を書くときとは異なる口語表現がある。
また、「 have to 」を「have got to」と言ったり、さらにそれを短縮して「 gotta 」と発音したりする。
こういう表現は、知らなければ理解できないが、知ってさえいれば問題なく理解できるようになる。
だから、このようなネイティブの会話表現を学ぶことができる教材を使って勉強すればいいだけだ。
▼ 「単語の音が変化しているから」への対策
「 big chance(ビッグ チャンス)」を「ビッチャンス」と発音したり、「as you(アズ ユー)」を「アジュー」のように発音したりするような音の変化のことだ。
このような音の変化は非常に数が多く、すべてを紹介することは不可能だ。しかし、いくつかのパターンに分類することができるので、そのパターンさえ抑えれば、それほど難しくはない。
勉強法としては、専用の教材を買って、音の変化パターンを学ぶのが一番効率的だ。
独学で学ぼうとすると、膨大な時間を無駄にすることになるので止めた方がいい。
■ リスニング勉強法のまとめ
この記事では、リスニングが上達しないのには以下の原因があるということを説明した。
- 単語力が不足しているから
- 英語のスピードに理解が追いつかないから
- 会話のときは、教科書とは違う言い方をしているから
- 単語の音が変化しているから
これらの原因を1つずつ克服していくことで、ネイティブの速い英語でも楽に聞き取れるようになる。
ただ、1つだけ注意してもらいたいのは、「必ず失敗するリスニングの練習法」で話したように、聞き流し勉強は100%失敗に終わるということだ。
だから、必ず集中してオーディオを聞くようにしていただきたい。
ダラダラと長時間やるより、短時間に集中して勉強するほうが何倍も効果がある。