昔読んだ通訳者の本に、印象的なエピソードがありました。
その方は、朝から晩まで映画館に通い詰め、上映される映画をひたすら観続けることで、英語を習得していったそうです。
今では考えられないですが、当時は1枚のチケットで何本でも映画を観ることができた時代でした。
今のように英語教材が豊富でなく、ビデオやDVDすらなかった頃は、そんなふうにして生の英語を吸収していたんですね。
私も英語学習を始めたばかりの頃に、その方法をまねて何度も映画館へ足を運びました。
『タイタニック』を劇場で5回観たのも、その頃の話です。
現在はネットの力で、洋画や海外ドラマを自宅で簡単に楽しめるようになりました。
つまり、ネイティブの自然な英語に触れるチャンスが、いくらでもあるというわけです。
でも、便利になった今のほうが、みんなが英語を話せるようになったかというと…そうとも言えませんよね。
その理由の一つが、「洋画・海外ドラマをどう活用するか」にあるのです。
今回は、洋画や海外ドラマを英語の勉強に使う際の長所と注意点についてお伝えします。
洋画を使うことで得られる3つの利点
英語学習に洋画を取り入れることで、以下のような良い点があります。
- 楽しみながら続けられる
- ネイティブが使う本物の英語を学べる
- 映像と一緒に記憶に残りやすい
特に「リアルな英語表現に触れられる」という点は大きな魅力です。
英語初心者向けの教材では、どうしてもわかりやすく作られているため、自然な会話とは少し違うことがあります。
もちろん、それで意思疎通はできますが、話し方がややぎこちなく感じられることもあるかもしれません。
映画では、ネイティブスピーカーが日常的に使う言い回しがふんだんに使われており、実用的な英語を学ぶには最適です。
さらに、セリフと映像を結びつけることで、覚えた表現が印象に残りやすいというメリットもあります。
学習効果を得るために気をつけたいこと
ただし、洋画を英語学習に使うには、いくつか注意すべき点があります。
- 聞き取れない音声を聞き流しても意味がない
- 映像に集中しすぎて音を聞き逃す可能性がある
- 映画内の表現は応用が難しいこともある
まず、セリフがまったく聞き取れない段階で映画を観ても、英語力が伸びることはほとんどありません。
たとえば、洋楽を何時間も聴いても自然に話せるようになるわけではないですよね。
ですから、ある程度英語の基礎ができてから洋画を使うほうが効果的です。
また、ハリウッド映画などは映像のインパクトが強く、つい画面にばかり気を取られてしまうことも。
リスニングの練習をしているつもりが、いつの間にか映画をただ楽しんでいただけ、ということにもなりかねません。
そしてもうひとつ、映画で使われる英語は必ずしも文法に忠実ではないため、覚えた表現をそのまま応用するのが難しいことがあります。
「自然な英語だからそのまま使える」と思いがちですが、文法的に正しくない表現だと、自分の会話には取り入れにくいという側面もあります。
英語学習に向いている映画の選び方
では、どんな洋画やドラマを選べば、学習効果が高まるのでしょうか?
英語の初級を脱したあたりであれば、次のような作品を選ぶのがポイントです。
・専門用語が多いジャンルは避ける
・アクション中心の作品は非効率
・日常会話が多いジャンルがおすすめ
医療や法律ドラマのように、専門用語が飛び交う作品は内容も理解しにくく、学んでも会話ではあまり使いません。
アクション映画はセリフが少なく、視覚に頼る時間が長くなりがちなので、学習目的にはやや不向きです。
一方で、家族の物語や恋愛がテーマの作品は、日常的なフレーズが多く登場するため、覚えた言い回しをそのまま使えるシーンがたくさんあります。
言葉の難易度も比較的低いため、学習にはぴったりです。
もし、洋画や海外ドラマを使って英語を勉強してみようと考えているなら、ここで挙げたポイントを参考に、適切な作品を選んでみてください。
うまく取り入れれば、楽しみながら英語力をぐんぐん伸ばせますよ。